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ローラーの負荷の話

骨折のせいで実走もレースも出来ずに、ずっとローラー。
そこでローラーの負荷について考えてたことを文章に起こしてみて、ついでにちょっとばかり計算もしてみた。
後でもう一度思い出したり、計算したり、調べたりするのはメンドウなので、そのまま公開。
言うまでもなく、書いてあることが正しいっていう保証はない。
ご指摘は歓迎。

GTローラーは、バイクのフロントを固定、リアタイヤを2本のローラーと接触させて使う。
ペダルを回すと、ローラーが回って、ローラーがつながっている重たげなフライホイールも回る。
この仕組みの中で、一体どうやって負荷を生み出しているのか。
手元のレバーでの負荷切り替えはどうやっているのか。

グロータックの詳細カタログによれば、GTローラーの負荷は磁石が発生させている。
ローラーにはマグネット式とフルード式があって、GTローラーはマグネット式。
が、その原理を検索してみても、わかり易く解説した資料があまり見つからない。

分解した図も見つからないので、ここからいきなり推測に突入w
恐らく、マグネット式は渦電流で回転するフライホイールに、磁気でブレーキをかけることで、負荷を発生させているんだろう。
向かい合わせに置いた磁石で磁場を作って、その中でフライホイールを回すと、渦電流が発生する。
発生する渦電流はフライホイールの回転を邪魔する方向。
レンツの法則。

だから負荷は磁気ブレーキによる負荷から計算できる。
渦電流の電圧は、ファラデーの式から以下の式(1)のようになる。

\[\oint_{S} \boldsymbol{E}\cdot d\boldsymbol{s} = -\frac{d\Phi_{B}}{dt} \tag{1} \]

この式はWikipediaの「ファラデーの電磁誘導の法則」の項目から拝借してきたもの。
左辺は電場ベクトルを距離で積分したもので、要は渦電流の電圧。
単位はボルト。

右辺は磁場の時間変化率。
つまり渦電流の電圧は磁場の時間変化に比例するわけ。

ローラーから見ると磁石は動いてないし、磁力も変化しないので、磁場は動いてない。
でも回転しているフライホイール側から見れば、磁石は動いているから、磁場も動いていることになる。

磁場は磁束密度Bと磁場の影響を受ける面積Sの掛け算。
回転中、磁力は変化しないから、磁束密度Bは一定だと仮定。

一方、フライホイールの中で、磁場の影響を受ける部分は変化していく。
磁場の影響のある部分の移動速度はフライホイールの回転速度になる。
ってことで、渦電流の電圧はフライホイールの回転速度の一次関数になる。

なお負荷調整については、GTローラーでは磁石同士を回転の動径方向にずらすことで実現している。
動くのは片側の磁石のみで、手元のレバーを負荷の大きい方から小さい方に動かすと、片方の磁石がフライホイールからずれていく。
もう1つの磁石はフライホイールにくっついていると思われる。
一番重い負荷では、磁石はフライホイールと完全にオーバーラップしていて、一番軽い負荷では、フライホイールとはほとんど重なっていない。

オームの法則、V=RIから、負荷Pは以下のようになる。

\[P=IV=\frac{V^2}{R} \tag{2}\]

Pは電圧の二乗に比例するから、式(1)の右辺を考えると、磁束密度と回転速度の二乗に比例することが分かる。
フライホイールの回転速度は、サイコンの速度表示と比例するから、マグネット式ローラーの負荷はサイコンの速度の二次関数になる。
適当に定数を使って式にすると、こんな感じ。

\[P = C_{0} + C_{1} v + C_{2} v^{2} \tag{3} \]

速度がゼロだと負荷もゼロだから、式(3)の第一項はゼロ。
負荷が磁気のブレーキ以外に何もなかったら第二項もゼロのはずだけど、実際には摩擦(速度の一次に比例)とかがあって、そうもいかない。
そこで式(3)は式(4)のように書ける。

\[P = C_{1} v + C_{2} v^{2} \tag{4} \]

フィットはやり方は色々あると思うけど、一番簡単なのは、エクセルの近似曲線を使うこと。
多項式近似で次数を2、切片を0と指定することで、式(4)でフィットできる。

抜き出す換算表の数値は多ければ多いほど正確になるけど、怪しい数字には注意したほうがいい。
よくあるのが、何点か測定して、それらを直線で結んである表。
そういう表からは、実測データそのものを推測できそう。

例えばGTローラーの最大負荷の負荷表は、30km/h付近でちょっと上に盛り上がっているし、40km/h付近で急に傾きが変わっている。
実測した点を結んでいる匂いがする。

換算表から抜き出して得られた式は以下。
速度は時速。

\[P = 8.6172 v + 0.2456 v^{2} \tag{5} \]

ちなみにミノウラのFG540でも同じ式(4)が使える。
また三次の項を追加した関数でフィットしても、三次の項の係数はほぼゼロになる。
つまり二次関数でのフィットは、少なくとも近似的には、正しいってこと。

ところで、実走の負荷は速度の三次関数になることが知られている。
空気抵抗が三次の項、それ以外が一次。
速度が低いときはほぼ一次関数なのが、高速になると三次の項の影響が大きくなって、空気抵抗がメインになってくる。
負荷が低速で一次関数に近ければ近いほど、要は速度に対して負荷の上昇が緩やかであるほど、実走感があるという評価につながると考えられる。
空気抵抗の負荷の再現がいまいちなんて話は聞いたことがない。

よくハッピーメーターというコトバを耳にする。
また、ZwiftのZPowerは高めに出るから嫌われるんだそうだ。
そこで検証のため、GTローラーの負荷表からワタシのFTPを換算してみる。
式(5)にワタシの20分全力走の速度を入れてみると、なんと20分のパワーは370W近い、という計算結果。
0.91倍して、FTPは335W。
体重が約74kgだとして、PWRは4.5を超えている計算になる。

ンなはずねーwww
PWR4.5なら、ヤビツのベストが38分台なんて遅すぎ。
34分切りが視野に入る。

これで分かるように、ローラーからの換算パワーは、実際のパワーより大きな値になる。
この理由についてはきっと以下の通り。

負荷は磁力と速度で決まっている。
実は上の計算では磁力一定を仮定したけど、そこにウソがある。
ローラーを回すと、フライホイールはさわれないほど高温になっていく。
で、高温になると磁力は低下する。
上でなぜ磁力一定で計算したかというと、回転速度に比べて、磁力の変化は遥かにゆっくりだから。
定量的に速度の寄与のほうが圧倒的に大きい。

温度の特性は磁石の種類によって違っていて、GTローラーはネオジム磁石を使っている(詳細カタログ上の表記はネオジウム)。
ネオジム磁石は温度が1度上がると磁力が0.12%ダウンする。
マジで回したときに磁石が何度になっているのか測ったことはないけど、40度とか50度とかのお風呂の温度程度ではなくて、触るとやけどするレベル。

負荷は磁力の二乗に比例する。
例えば室温10度で、磁石が約60度になってしまうと、磁力は6%ダウンして、そうなると負荷は約12%ダウンする。
70度だと約14%。
300Wで回した場合、35Wとか40W下がることになるし、370Wだったら45W~50W下がる。
これで計算し直すと、ワタシのFTPは290~295W、PWRは3.9~4.0。
ヤビツのベストタイム、38:37相当のPWRと近い数値になる。

GTローラーは自重式なので、体重が影響するし、使うタイヤ、インナーチューブの種類、空気圧でも転がり抵抗は変わる。
そういう測定条件はどこにも書いてない。
だから、変換表はあくまでも参考値。

メーカーもZwiftも、磁石の温度が上がる前の、磁力が強いときにローラーの負荷を測定することで、換算値を計算してるんだろうな。
でも、換算値を調べるとき磁石の温度が上がりきるまで待てばいい、というほど単純な話でもない。
例えば、スプリントの磁石の温度は、それまでの展開で決まる。
ピークパワーの持続時間はとても短いので、スプリントの温度上昇の寄与は小さい。
それに、ピークパワーに対応した温度まであげてからパワーを測ろうとすると、ほとんどの場合、磁石が壊れちゃう。
1000Wなんて、家庭用のIHとかとそう変わらないから、永久磁石であっても、磁力が元に戻らなくなる。

どこまでの負荷でどういう条件で磁石の温度上昇を考慮すべきか。
ユーザーの体重、タイヤをどのように想定するのか。
そういうのって結局のところ、ケースバイケース。
ちゃんとパワトレやりたいなら、ちゃんとZwiftやりたいなら、パワーメーターを買ったほうがいいよ、という結論。
Zwiftのことはよく知らないけど、ZPower組とパワーメーター組の混走は避けたほうがいいんじゃないかな。
ZPowerでやってるユーザーって一定数いるだろうから、運営はこういうことは言わないだろうけど。
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コメント

No title

壁さん
拝読させていただきました。興味深い記事でした。
早くケガなおると良いですね。

Re: No title

実は数式を書きたかっただけなんです(*ノω・*)テヘ

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プロフィール

Tsutomu Chonan

Author:Tsutomu Chonan
アラフォーおじさんサイクリスト。
Zwifter

愛車:
TREK DOMANE4.3 (2013)
YONEX CARBONEX HR

戦績:
29. 富士ヒル2019
1:07:09.40 年代別24位

28. 大磯クリテ第6戦
チームTT 2位🥈
エリート 15位

27. 大磯クリテ第5戦
エリート DNF

26. TOKYOエンデューロ 2019 in 彩湖
1hソロ 6位

25. みんなのタイムトライアルジャパン 1st stage
セミクラシックTT男子 9位

24. 大磯クリテ第3戦
エキスパート 2位🥈

23. 大磯クリテ第2戦
チームTT 優勝🥇
エキスパート DNF(落車)

22. 大磯クリテ第1戦
ミディアム 2位🥈

21. 宮ヶ瀬クリテ第1戦
ミディアム 13位

20. 富士ヒル2018
1:10:22.50 年代別52位

19. みんなのタイムトライアルジャパン 3rd stage
セミクラシックTT男子 11位

18. もてぎサイクルマラソン
DNF(落車)

17. 大磯クリテ第3戦
スポーツ2組目 2位🥈

16. みんなのタイムトライアルジャパン 1st stage
セミクラシックTT男子 5位

15. 大磯クリテ第2戦
スポーツ2組目 DNF(落車)

14. はやま南郷ヒルクライムスプリント2017
準々決勝敗退

13. 第12回 川崎マリンエンデューロ
2hソロ 2位🥈

12. ビルクライム2017
55位

11. 秋のしもふさクリテ
ビギナーI 6位
ビギナー決勝ラウンド 15位

10. 富士チャレ2017
ソロ100 33位

9. 第2回Super Cycle Enduro in 下総
3hソロ 11位

8. そでがうらサマーサイクルロードフェスタ2017
ビギナーI 16位
ビギナー決勝ラウンド 22位

7. 宮ヶ瀬クリテ
ビギナー2組目 2位🥈

6. 第11回 川崎マリンエンデューロ
2hソロ 24位

5. 富士ヒル2017
1:17:26.06 年代別171位

4. 第1回 フクアリクリテ
スポーツ 11位

3. 大磯クリテ第6戦
ビギナー2組目 3位🥉

2. はやま南郷ヒルクライムスプリント2016
準々決勝敗退

1. 富士ヒル2016
1:24:13.91 年代別243位